BtoB技術営業職として働き始めて3年がたった今、営業マンに必要な2つのスキルのうち最も重要なのはどちらか考えてみた。
- 提案力
- 行動力
無論、どちらも営業マンにとってなくてはならない能力ではあるのだが、今回は私の営業哲学に触れながらこの二大スキルのダービーマッチに勝敗をつけたいと思う。
本記事は以下のような方に是非読んで頂きたい。
- 営業職として働き始めたばかりの方
- 就活を始めるにあたり自分がどのような職種を選択するべきなのか悩んでいる方
- 営業職への転職を考えている方
- 成果がなかなか出ず、何か突破口を探している方
1人の営業マンがどのような哲学で働いていてどのような勝ちパターンを持っているのか、ということを情報収集の一環として是非知って頂きたい。
自己紹介
私は一部上場企業で化学品の技術営業職として働いている。
顧客は自動車メーカーや自動車メーカーのサプライヤー(所謂Tier1、Tier2)であり、私の担当はEV関連の次世代ニーズの発掘、次世代技術開発の推進、最先端技術の情報収集だ。
開発案件に関しては技術畑の設計や材技、また製品コストや供給性、値上げといった話題の時は購買を相手にして営業活動に取り組んでいる。
所謂BtoB(B2B)の仕事をしており、1つの顧客だとしても関係者の数は多く、技術的な提案だけでなく時には対人スキルを駆使した営業力が求められる。
担当者との個人的な関係構築だけでなく、時には上層部同士を繋げるといった会社対会社の関係を活用した関係構築にも取り組んでおり、私なりに学び・感じてきたことがあるため、今回その経験から得られた私なりの営業哲学を話していきたい。
提案力と行動力を定義づけする
まず、提案力と行動力の2つの営業スキルについて定義づけしていく。
提案力とは?
NIKKEI The KNOWLEDGEでは以下のように説明されている。
提案力とは、単純にヒアリング力や説明力などと言い換えることが難しい、複合的な能力のこと。営業活動における提案力を定義するなら、「顧客が抱える問題を発見し、商品による解決方法を考え、わかりやすく伝える」能力といえるでしょう。
NIKKEI The KNOWLEDGE 提案力を鍛える! – NIKKEI The KNOWLEDGE (日経ザ・ナレッジ)
提案力というと、「わかりやすく伝える力」が主だと考えられがちだが、「問題を見つける力」や「解決策を見出す力」も含めた総合的な力が提案力であるということを認識頂きたい。
特に技術営業の場合、対人関係における「伝える力」以上に「問題を見つける力」や「解決策を見出す力」は重要だ。
以下では「問題を見つける力」、「解決策を見出す力」、「わかりやすく伝える力」の3つに分けて説明する。
問題を見つける力
「問題を見つける力」1つをとっても、さらに細分化することができる。
- 顧客の課題やニーズを引き出す力
- 顧客もまだ気づいていない潜在ニーズを掘り起こす力
- 顧客は課題と感じていなかったことを課題として認識させ改善余地を認識させる力
顧客の嬉しさを見出すためのビジネスの種を探す力が「問題を見つける力」である。
課題に対して解決策を考える論理的思考力や、解決策を顧客へ分かりやすく伝えるプレゼン力をいくら持っていたとしても、根本のビジネスの種を見つけ出すことができなければ商売は始まらない。
常にアンテナを張り、対人する相手や現場から情報を収集する「問題を見つける力」が提案力の基礎として備わっていなければならない。
解決策を見出す力
前段では提案力の大前提と言える「問題を見つける力」について説明した。
「分かりやすく伝える力」の前に説明をしたいのが「解決策を見出す力」である。
見つけた問題に対し、自社の製品・サービス・技術で解決策を見出すこと。
時にこれは自社の技術部門の人間と一緒になって考えることではあるが、営業マンがこの力を有していると、案件化の数が飛躍的に向上する。
この時見出した解決策は以下のようなポイントを押さえておく必要がある。
- 本当にできるのか
- コストや期間が成果に見合ったものになっているか(自社、顧客両方の目線)
- 自社にしかできない差別化ポイントがあるか
- 他のビジネスへの横展開が考えられるか
自社の限られたリソースで儲かるビジネスなのか、顧客にとっても嬉しさがあるのかを踏まえて事業成立性を判断し、win-winな解決策を見出すことが求められる。
加えて、他社参入を許さない自社の強みを生かしたビジネスであることや、他案件への横展開の可能性までも考慮した上で解決策を考案することができると、かなりハイレベルな営業マンである。
分かりやすく伝える力
前段2つのスキルの上にある、最終的な成果に直結するスキルが「分かりやすく伝える力」である。
営業マンに必要なスキルとして一般的に考えられがちなのが「分かりやすく伝える力」であり、このスキルが最終的な顧客の購買判断に左右する。
「分かりやすく」伝えるためにポイントとなるのが、相手の立場や思惑を考えることである。
例えば相手が技術畑の人間の場合、論理的に順序立てて説明をすることが求められ、必要に応じて根拠となるデータや写真、製品実物などを見せながら伝えることが重要だろう。
一方相手が購買など事務畑の人間の場合、技術的な話をし過ぎると退屈に感じられるかもしれない。数字などで端的に分かりやすく顧客のメリットを示しながら、時にはオーバーに説明した方が良いだろう。
さらには、相手が部長級以上など常に忙しく、資料や説明をじっくり見る時間がない相手の場合は、丁寧な説明をするのではなく要点を抑え結論ファーストで物事を伝える必要がある。
相手の立場や思惑を考慮し、どのような提案をされると相手が判断しやすいのかを見極め、購買判断を促すような伝え方を選択しよう。
行動力とは?
Schoo for Businessでは以下のように説明されている。
行動力とは、自分が思い描くことを実際に行動へ移せる能力です。
Schoo for Business 行動力とは?行動力を育成するメリットや行動力を高めるためのポイントを解説 | オンライン研修・人材育成 – Schoo(スクー)法人・企業向けサービス
自分が思い描くことを実際に行動へ移せる力である行動力を構成する要素を細分化すると、以下に分けられる。
- ゴールからバックキャストしその道のりをイメージする力
- 優先順位付けができる段取り力
- 難しいことに挑戦しようとする向上心
- 自分から”体”を動かす主体性や俊敏性
ゴールからバックキャストしてその道のりをイメージする力
ゴールに対して自ら「思い描く」ことができなければ、必要な行動が導かれることはない。
行動するためには、その基礎能力としてゴールまでに必要な行動を想像する力が無ければならない。
道のりをイメージするためにはもちろん経験も必要であり、最初は経験のある人間の知識を頼らなければいけない場合もある。
大事なことは、ゴールまでに必要な行動を漏れなく(かつ理想的にはダブりなく)炙り出し、いつまでに誰が何をしなければいけないのかを最低でも自分の中で整理することである。
理想としては、すべてのタスクの期限と責任者をチームで整理し、その進捗を管理していきたい。
道のりをより具体的にイメージすることができれば、行動するためのシナリオが準備できるのである。
優先順位付けができる段取り力
一部前段とかぶる部分があるが、列挙した必要な行動の中から、絶対に外せない行動はどれかを見定め優先順位を付けていく力が行動力には求められる。
極論行動力とは「質」より「量」で決まるため、可能な限りたくさんの行動をとることがベストではあるが、社会人には時間が限られている。
限られた時間の中で最大の成果を創出することが重要だ。
従って、数ある行動に対して優先順位を付け、限られた時間の配分を最適化する必要がある。
優先順位付けができていると、いざイレギュラーなタスクが発生した時の判断スピードが格段に違ってくる。
スピーディに意思決定をしすぐに行動に時間を割くことが、行動力を向上するうえでキーとなる。
難しいことに挑戦しようとする向上心
ゴールを思い描く際に、人間には動機・モチベーションが必要である。
そのモチベーションを最大限に高めより高いゴールを描くためには向上心が欠かせない。
「誰も成し遂げていないことを達成したい」「同期の誰よりも先に出世したい」「社内で表彰されたい」など、動機はひとそれぞれだが、その根底には向上心が必ずある。
難しいことに挑戦しようとする向上心と行動力は表裏一体であり、向上心のある限り人は行動し続ける。
私自身、向上心がある人は常に行動しており、報告書の数も圧倒的に多いと感じる。一方で、いつもオフィスにいてなかなか外に出て行かない人は、現状に満足しており悪い意味で物事を”批判的”に見ることがなく、何かを変えようと考えていないタイプの人だと感じている。
また、向上心と似たものとして知的好奇心も非常に重要な要素である。
自分の知的好奇心を満たしたいという想いは、多くの行動を推進する力になると考える。
自分から”体”を動かす主体性や俊敏性
向上心と連動しているが、行動力の要素として最も需要なことは、自分から”体”を動かす主体性や俊敏性である。
いくら頭を使ってゴールを描きその方法を考えたとしても、”体”を動かさなければそれは何もしていないことと同じである。
物理的にどこかへ移動しろという意味ではなく、”体”を動かすとは、時には「メールを一本入れる」「電話を一本入れる」程度のことである。
いずれにしても、頭で考えたことに対して自らアクションを取る力が行動力には最も重要である。
人から言われる前に自ら動き出す主体性や、長く考える前にまず手を動かす俊敏性は、行動量を上げるための重要な要素だ。
この主体性と俊敏性が連続性を持つことが出きれば、ゴールへ確実に近づいていき、最終的な成果に繋げることができる。
重要なのは「行動力」
「提案力」と「行動力」、どちらも営業マンにとって必要不可欠な能力だが、どちらか1つ重要なスキルを選ぶのであれば、私は「行動力」一択だと考える。
営業マンに求められるのは「成果」であるが、「成果」をより多く創出するためには、「成果」に繋がる「行動」を増やすほかない。
「行動」の中から「成果」へ繋がる頻度、確立を上げるためには「提案力」を磨く必要があるが、それは「行動力」の二の次であると考える。
要は、営業マンにとって重要なのは「質」より「量」だという結論だ。
特に営業として働き始めの最初の数年はとにかく「量」を意識して活動するべきである。
なぜなら、「提案力」は自分の行動から生まれる経験や日々の勉強を通して向上させることができるが、「行動力」は自身が持つ「向上心」や「主体性」、「俊敏性」に基づく一次スキルであるからである。
前段で説明した「行動力」が営業マンに最も求められるスキルであり、行動力さえあればその行動量から「提案力」、すなわち「質」を改善していくことはできる。
以上から、以下の通り纏めようと思う。
- 営業マンあるいは営業マンを目指す人は、自分が「行動力」のある人間なのかをまず考える
- 行動力がある場合、営業マンに必要な素質があると考えられる
- 行動力が無い、あるいは不足している場合は、より適した職種を探すか、あるいは行動力を上げるためにトレーニングするべきである
- 少なくともゴールを描き必要な行動をイメージする。そしてその行動に優先順位を付け段取りを付けていくことを徹底する
以上、現役営業マンが自分の営業哲学を熱弁した。ここまで読み切った方は、知的好奇心や向上心が高い人ではないかと思う。
なにか1つでも学びそれを行動に移すことができる人は、私なんかよりもはるかに行動力のある営業マンだろう。
私も知的好奇心に溢れているので、是非他の方の営業哲学も聞いてみたいと思う次第である。
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