理系大学卒、あるいは大学院卒だけれども、研究職に就くか営業職に就くか迷っている方はいませんか?私も就活時は大学院まで来たからには研究職として働くべきか、あるいは視野を広げていわゆる事務系採用で就職活動を進めるべきか非常に悩みました。
今回の記事は、次のような方にお勧めです。
- 理系として学歴を歩んできたものの、正直研究職を仕事として続けたいとは思わない
- とは言うものの、理系としての素養を最低限生かしたい
- 理系のバックグラウンドからおさらばする勇気がない
ちなみに私は、悩んだ挙句現在はエネルギー系の会社の技術営業職として働いています。研究職、営業職以外にも世の中には様々な仕事がありますが、今回の記事ではこの2つの職種にフォーカスしてお話していこうと思います。本記事を読み終わったときには、
- やっぱり研究を社会人でも続けよう
- これまでの経験を活かしつつ研究ではなく営業職に就こう
- 全く関係のない業界・職種だけど自信をもって進んでいこう
このように、納得感をもってご自身の進路を選択できるようになっていてくれると嬉しいです。当時の私自身の悩みや実際に働いてみて感じていることを踏まえながらお話していきます。
これまでの専門領域は一旦取っ払って考える
最初に言うか最後に言うか迷いましたが、やはり最初にこれは伝えておきます。就職活動において、これまでの専門領域は全て取っ払って考えてみてください。もちろん、これまでの専門領域や経験、自分の得意なことを活かすことが出来た方が仕事で活躍はできるでしょうし、就職活動においても志望理由や自分の長所が話しやすく有利です。
しかし、ここで強調させてほしいことは、「あらゆる業界、職種でも働くことができる」ということです。自由に選んで挑戦できるのは、新卒採用が最後のチャンスだと思います(転職でチャンスを掴むこともできますが、難易度が上がります)。
ですので、自分のこれまでの経歴だけにとらわれず、今何に興味があるか、これから何がしたいか、今後伸びそうなのはどんな分野か、と自問自答し視野を広げて考えてみてほしいと思います。
企業での研究職とは
企業での研究と、大学での研究の一番の大きな違いは、「稼いで利益を出さなければいけない」ということです。アカデミックの研究も、予算の確保など、世の中から求められていること・評価されることに取り組むという点では根本的には同じなのですが、やはり企業で研究する以上は、最終的なビジネスのゴールが重要になります。
あえて極端に述べると、
- 大学での研究:知的好奇心を追求していく。物事の理を解明していく。
⇒結果として世の中にインパクトを与える発見ができたら最高。
教科書に載るような発見もできる一方、日の目を浴びることは難しいし、そのスパンが長い。 - 企業での研究:お客様、世の中が求めている製品・技術を開発する
⇒シーズ探索もあるが、基本はニーズありきの研究。
自分の研究成果がモノとして世に出ていくことを実感できる。またそのスパンが短い。
こんな感じかなと思います。大学での研究は、今まさに研究室に所属している方の方がよく理解していると思うので、ここからはより企業での研究にフォーカスしてお話しします。
お客さんと接する機会は多い
上記の通り、お客さんのニーズやシーズが企業での研究開発の出発点となります。ですので、お客さんとの打ち合わせというのは頻繁にあります。テーマアップのきっかけづくりや、人脈作り、最終的な価格交渉、需要の調査、情報抜きなどは営業の仕事ですが、技術的な打ち合わせには積極的に研究サイドの人間が参加します。足元はオンライン会議が多いですが、面直で打合せすることもありますし、コミュニケーション能力(技術的な情報を引き出す・自分の会社にとって有利な開発になるよう入れ知恵をする)は非常に重要です。
私は技術営業職として働いており、技術と営業のどちらも担うような働き方となりますが、会社によっては、技術と営業に分かれてており、二人三脚となって開発を進めていく場合もあります。
「研究職だから、お客さんと接する場面が少なく、研究所に籠ってひたすら手を動かす」という認識は、企業によっては大きくズレているかもしれません。お客さんの真のニーズを引き出しながら、他社に負けない開発を進め、技術的な信頼を勝ち取るというのが企業の研究職の醍醐味だと思います。
好きなことを探求する時間をとる難しさ
大学においても、予算をとる難しさはあると思いますが、企業では予算確保はもちろん、時間を確保することが難しくなります。
もちろん、中長期的な研究は非常に大事で、そこに時間を割くことができない企業は将来に不安がありますが、まず第一に、足元の開発や需要家対応、時にはトラブル対応が最優先になる時もあり、将来の飯のタネに向けた基礎検討であったり、単純に自分の好奇心の探求(時にそれがブレイクスルーに繋がる)に時間を割くことは企業だと難しいです。
短期的に世の中に価値をバンバン生み出し、製品や実際の消費者のイメージを持ちながら研究をしたいか。あるいは、最終的にどのようなカタチで世の中に出ていくのかイメージも持てないが、大きなインパクトを中長期的に目指したいか。自分がどこにモチベーションを感じるのか、ということをきちんと理解することが大切です。
コスト・供給面での検討
これはある意味、会社の利益に直結し成果が見えやすい検討になりますが、企業ではコスト・供給面での検討が必要不可欠です。歴史的な原材料価格の高騰や、地政学リスクへの対応としてBCP対策が企業には求められています。
新しい技術の開発!というよりは、代替可能な原材料を検討する、調達先を複数持つことを検討する、製品をより低コスト化する、このようなある意味地味な取り組みが、企業の価値や利益を高めることに繋がります。
アカデミックな研究では、上記のような運用上のコストやリスクにはあまりフォーカスしませんが、企業で研究する以上は、このような点も考慮する必要があるというのは特徴です。
営業職とは
営業職といっても、商材は様々なモノがあります。保険、金融サービス、ビール・お菓子、不動産、化学繊維、自動車部品、、、などなど。
ここでは、理系学生向けに、技術そのものや技術製品をBtoBで販売する営業職を中心にお話ししようと思います。
理系・文系という枠に囚われすぎない
まず、あえてお伝えしたいのは、理系・文系という枠に囚われすぎないということです。営業職である以上、その仕事は文系の人にもできるものであり、実際に私も高付加価値の化学品を自動車メーカーや化学メーカーなどに販売したり、一緒に製品を開発したりする技術営業をしていますが、同期に文系の人もいます。
営業である以上は、最終的な価格交渉や人脈形成、お客さんとの対話が仕事の中心になりますので、理系だから~~と、頭でっかちにならない方が、扱う商材の視野が広がるはずです。
では、理系の営業の強みは?
とはいえ、理系卒の営業として働く強みは何なのか。最も気になる点だと思います。
理系出身の営業の強みは、たくさんあると考えています、例えば以下の通りです。
- 扱う商材によってはバックグラウンドを活かすことができる。
化学:使用している化合物の特徴やイメージを分かりやすく伝えることができる。
機械:お客さんとメカニックな話ができる。実際の動きや使われ方をイメージできる。 など - 論理的に伝えることができ、お客さんから技術的に信頼してもらえる。
- 情報を整理し、論理的に考え仮説を立てることができる。
下の2つは、正直文系出身の人でも優秀な人は持っているスキルです。ただし、理系学生は一般的にロジカルに物事を考え、伝えることができると考えられていて、だからこそ企業も理系卒の営業職を求めている部分があります。
理系学生としては、当たり前にやっているようなゼミでの進捗報告や論文作成は、物事の背景や目的、意義を伝えることや、事実と考察を切り分けて整理し、現実的な解釈をすること、また時には飛躍的な考察を分かりやすく(時には図を用いて)伝えることといった能力のアウトプットであり、それは営業職として大変重要なスキルです。
ITシステムを企業に導入する仕事(SIerと呼んだりしますが)でも、近年大学院卒(情報系出身に限らず)の学生が求められており、その理由は今述べてきたようなことがあるはずです。
特に技術そのものや技術製品を企業へ販売する営業の場合、時として対峙する相手はお客さんの技術担当の人です。自分の商材に関する技術的な知識があることはもちろんですが、技術的なバックグラウンドを広く知っていること、技術者が納得するような論理的な説明、受け答えができることは、理系学生の強みだと思います。
コミュニケーションスキルに自信がある、技術よりは人と接する仕事に重心を置いて働きたい、という人は、理系ならではの営業職というのがぴったりな仕事かもしれません。
扱う商材が異なっても、活かせる考え方やスキルは同じ
技術的なバックグラウンドの知識を活かすという点では、商材を何にするのかによって強みの発揮できる範囲が変わります。一方で、扱う商材が異なっても、上述の論理的思考力やコミュニケーション力というのは必ず役に立ちます。
「今までのバックグラウンドを活かす」という観点に縛られず、この業界に興味があるから仕事にしてみたい、この商材を売ってみたい、今後この業界は伸びるはず、といった考えも持って、自分がどんな商材、技術を売りたいのか考えてみてほしいと思います。
そしてなにより、お客さんとの対話を通して、技術的にも人間的にも信頼され、お客さんの真のニーズを聞き出し一体となって開発・製品化を進めていくことは、扱う商材に関わらず、営業職の醍醐味です。
最後に
本記事では、理系出身で技術営業職として働いている筆者の考えをまとめました。この記事を読んで、少しでも視野が広がり、自分のやりたいことのイメージを深堀できるようになって頂けたら幸いです。
私の記事も含め、実際に働いている人の声というのは非常に参考になります。親御さんや兄弟、大学の先輩など、色んな職種の人に働き方のリアルを聞くことが、将来のミスマッチを可能かなぎり無くしていくと思うので、ぜひ色々な人の話を聞いてみてください。
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